火花ー又吉直樹 感想
芸人、ピース又吉直樹が書いた小説、といまさら説明するまでもないだろう。
既に芸人又吉直樹を知ってしまっている私からすると、先入観を持たずして読むことはできなかった。
ほとんどの人がそうだろう。
さらに言えば芥川賞を受賞してから読んでしまったのである。
期待もある一方、本が売れない世の中であるから話題作りのための受賞、と疑っても仕方ないだろう。
そんなことを思いながら読んだ『火花』だ。
簡単なあらすじは
芸人として売れることを目指す若者(徳永)とその先輩芸人(神谷)の話である。
芸人としてどう生きるべきか、それぞれの葛藤が描かれている。
読みやすい文章で、伝えたいと思われることもわかりやすい。
テンポの良い会話も多く、場面もスムーズに変わっていくためさらっと読める。
火花という物語は少々ぶっとんだ先輩芸人神谷の物語であり、
面白かったのは彼のセリフだ。
面白いといっても笑えたということではないが。
これは是非読んで確認して欲しい。
神谷は普段なら恥ずかしくてなかなか言えないようなセリフをしらふで言ってしまうのである。
この神谷のセリフに作者の書きたいセリフがたくさん書かれていると思った。
さらっと読めてしまう分、読後の頭の中にずーっと残り続けるような読後感はない。
しかし、初の長編小説でここまでの作品が書けるのだ。
次の作品があるのなら期待してしまう。
今回のテーマは作者の職業がテーマとなっているからこそリアルであった。
火花がこれだけ大きな話題になった分、次回作へのプレッシャーはとてつもないものだろう。
全く別の舞台でどのようなストーリー、キャラクターを書いてくれるのか今後に期待だ。